綜合建物サービスのカンボジア実習生事例
1.ガイド中に起こった運命的な出会い
前回コラムでは、茨城県取手市のビルメンテナンス会社「綜合建物サービス」の話題を取り上げたが、今号では同社で実習中のカンボジア技能実習生チェック・サンさん(38)(写真)の話をお届けする。
サンさんは、カンボジア北西部のシェムリアップ州にある小さな村の出身で、綜合建物サービスの技能実習生受入れの二期生として来日し、この春で3年目を迎えた。
幼少期にカンボジア内戦で父親を亡くし、貧しい生活のなか寺子屋に通い、独学で日本語を学んだ苦労人だ。サンさんの来日は、数年前に大野操会長が商談でシェムリアップを訪れた際、ガイドとして案内したことがキッカケだった。
「会長との出会いに、運命的な縁を感じました」とサンさんは当時を振り返る。
2.日本でのステップアップを決意
シェムリアップの外の世界を知らなかったサンさんにとって、日本人である大野氏のビジネスの考え方や、プノンペンにおけるビルメンテナンス事業の展開は、まさに目から鱗の胸躍る話ばかりで、日本への興味が一気に高まったそうだ。
そして、日本式ビジネスについて学び、いつか自分もカンボジアのためになる事業を起こしたいと考えるようになった。
その後大野社長からの誘いもあり、技能実習生として、日本でビルの清掃や保守についてイチから学ぶことを決意したのだった。
折しも新型コロナウイルス感染症が世界に蔓延しはじめた頃でもあり、自国に家族を残しての来日に一抹の不安はあったものの、何よりも日本で挑戦してみたいという気持ちの方が強かったという。
3.実習を経験し、広がったサンさんの視野
来日してからは、持ち前の明るさと勤勉ぶりを発揮し、様々な現場で作業の段取りやクリーニング技術の習得に努めてきた。日本人の上司や同僚とも良好な関係を築き、新しいことを覚えていく毎日が楽しく、自身の成長を実感しているそうだ。
「機材や備品の取扱いだけではなく、優れた安全衛生基準に驚かされました」とサンさん。
5S活動の徹底、作業開始前の安全確認、時間遵守、身だしなみなど、カンボジア人として学ぶところは大きいという。
経済成長著しく、高層ビルの建設ラッシュが続くカンボジアにおいて、日本式のビルクリーニングが水平展開されれば、格段に衛生面、安全面で環境改善されることは間違いないだろう。
サンさんの実習期間はあと半年程度となったが、帰国後は同社の現地法人SOKEN CAMBODIAでの就業を希望している。
「カンボジアに帰ったら、日本で学んだことを、若い人たちに全部教えてあげたい」と意気込む。
実習前は、自らの会社を立ち上げたいと考えていたが、今は大野会長、大野社長への恩返しと、カンボジア国の発展への寄与を考えるようになったそうだ。
サンさんが日本で得たものは、仕事の技術だけでなく、仕事の価値や意義だったのかもしれない。
(※このコラムは、ビル新聞2022年7月25日号掲載「綜合建物サービスのカンボジア実習生事例」Vol.40を加筆転載したものです。)