【建設業×外国人材】人手不足を解消する3つの制度を徹底解説!

コラム
COLUMN

~技能実習制度・特定技能制度・育成就労制度~

建設業界の人手不足、深刻ですよね。
ベテラン職人の高齢化、若者の建設離れ… 慢性的な人手不足は、会社の未来を脅かす深刻な問題です。

「このままでは、受注しても人が足りなくて工事が進まない…」
「せっかくのチャンスを逃してしまう…」

そんな不安を抱えている建設会社のみなさま。

解決策の1つとして、外国人材の活用があります。

「でも、外国人材を採用するなんて、難しそう…」
「ビザの手続きや、言葉の壁、文化の違い… いろいろ不安だ…」

このような事を思っていませんか?

この記事では、外国人材を採用するための3つの制度「技能実習制度」「特定技能制度」「育成就労制度」をわかりやすく解説します。

それぞれのメリット・デメリット、受入要件などを比較することで、あなたの会社にぴったりの制度が見つかるはずです。

外国人材の力強いパワーで、あなたの会社をさらに発展させませんか?

ぜひ、最後まで読んで、外国人材の採用について理解を深めてくれたら嬉しいです。

 外国人材を採用する3つの方法

従来の技能実習制度では、外国人労働者の失踪問題などが課題となっていました。

法務省の調査によると、2023年に失踪した技能実習生は9,753人と、過去最多を記録しています。 前年の2022年と比べると、9,006人から747人も増加しており、そのうち建設業は約47.1%と全体の約半数を占めています。

こうした現状を受け、技能実習制度に代わる新たな制度として、2027年から「育成就労制度」が導入されることになりました。

この制度は、外国人労働者の人材育成と定着を促進し、特定技能1号への移行を支援することで、失踪問題の解決を目指しています。

つまり、外国人材の受け入れ制度には、

  • 技能実習制度
  • 特定技能制度
  • 育成就労制度 (2027年スタート)

の3つがあり、それぞれに特徴があります。

以下に、それぞれの制度の概要やメリットをご説明します。

技能実習制度はどんな制度?

技能実習制度は、1993年に始まった制度で、開発途上国への技能移転を目的とし、 日本の企業で働きながら技能を習得した外国人実習生が、帰国後にその技能を母国の発展に役立てることを目指しています。

けれど、近年では、この制度の目的から外れた運用や、実習生の人権問題などが指摘されており、制度の抜本的な見直しが行われることになりました。

そのため、技能実習制度は「育成就労制度」に移行することが決定し、遅くとも2030年6月20日には、技能実習生の受け入れは終了する見込みです。

制度の特徴
項目内容
受入職種90職種165作業(建設関係は22職種33作業)
在留期間最長5年間
監理団体実習生の受け入れを監督し、実習が適切に行われるよう支援
技能実習生数全体で404,556人
(出典:法務省「【第3表】 在留資格別 在留外国人数の推移(令和5年末時点)」)

技能実習制度のメリットまとめ

人材不足の解消
技能実習生を受け入れることで、一定期間は人材不足を解消することができます。

技能実習生への技能移転
技能実習生は、日本で習得した技能や知識を母国に持ち帰り、現地の経済発展に貢献することができます。

特定技能制度はどんな制度?

特定技能制度は、2019年に始まった制度で、人材不足を解消し、日本の経済を活性化させることを目的としています。
一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れ、即戦力として活用することができます。

この制度では、技能レベルに応じて、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2つの在留資格が設けられています。

制度の特徴
項目特定技能1号特定技能2号
対象分野16分野全て介護分野を除く11分野
在留期間最長5年無期限
技能レベル各分野の技能試験に合格より高度な技能・知識を持ち、1号の要件を満たす
日本語能力各分野の日本語試験に合格1号の要件を満たす
家族の帯同不可可能
特定技能人材数全体で251,594人全体で153人
(出典:法務省「特定技能在留外国人数(令和6年6月末)」)
  • 技能試験と日本語能力試験
    特定技能の在留資格を得るには、技能試験と日本語能力試験(N4)に合格する必要があります。
  • 転職の自由
    同じ職種内であれば、自由に転職することができます。

特定技能の受入可能な業務内容

特定技能制度で働く外国人の方が従事できる業務区分は、これまでより分かりやすくなりました。以前は19種類もあった区分が、2024年8月30日に3つに統合され、外国人材がより幅広い業務に従事できるようになりました。

業務区分の統合

  • 土木区分
    道路や橋など、土木に関する工事全般
  • 建築区分
    ビルや住宅など、建築に関する工事全般
  • ライフライン・設備区分
    電気や水道、ガスなど、ライフラインに関する工事全般

どんな工事に従事できる?

  • 土木区分
    井戸を掘る工事、道路を舗装する工事、河川や港を浚渫する工事、公園を作る工事など
  • 建築区分
    大工工事、とび・土工工事、鉄骨工事、鉄筋工事、塗装工事、防水工事、石工事、機械設置工事、内装工事、建具工事、左官工事、タイル工事、清掃施設工事、屋根工事、ガラス工事、解体工事、板金工事、断熱工事、配管工事など
  • ライフライン・設備区分
    板金工事、断熱工事、配管工事、電気工事、通信工事、水道工事、消防設備工事など

今回の変更で、外国人材の活躍の場がさらに広がることが期待されます。

特定技能制度のメリットまとめ

即戦力となる外国人の確保
特定技能制度では、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れることができるので、即戦力として活躍してくれる人材を確保することができます。

人材の長期雇用
特定技能2号を取得した外国人は、在留期間に制限がなく、家族の帯同も認められています。企業にとっては、優秀な人材を長期的に雇用することが可能になりました。

育成就労制度はどんな制度?

育成就労制度は、2027年から始まる制度で、技能実習制度に代わる新たな制度です。
外国人材が日本で働きながら特定技能1号の資格取得を目指し、その後のキャリアアップを支援することを目的としています。

※育成就労制度は、まだ正式な内容が確定していない部分があります。この情報は、現時点での情報に基づいており、今後変更される可能性がありますので、最新の情報は、法務省のウェブサイトなどでご確認ください。

制度の特徴
項目内容
対象分野建設業を含む16分野
在留期間原則3年間(特定技能1号試験に不合格の場合、最長1年の在留継続が可能)
日本語能力入国前に日本語能力試験N5レベル以上が必要
技能レベル入国時は問われない(3年後に特定技能1号相当の技能レベルが必要)
育成計画企業は、外国人材ごとに育成計画を作成
転籍一定の条件下で可能
支援体制企業が外国人材の定着を支援(日本語教育や生活ガイダンスなど)する必要がある
  • 人材育成と定着
    外国人材の育成と、日本での長期的な就労を促進します。
  • 特定技能1号への移行
    3年間の育成期間を経て、特定技能1号の資格取得を目指します。

育成終了制度のメリットまとめ

人材育成
技術移転ではなく、長期的な雇用を見据えて育成することで、将来的な人材確保につなげることが期待できます。

特定技能1号への移行
育成就労制度で3年間就労し、特定技能1号試験に合格した外国人は、特定技能1号の在留資格を取得し、引き続き日本で就労することができます。

一目でわかる!外国人材採用制度の比較表

項目技能実習制度育成就労制度特定技能制度
目的開発途上国への技能移転特定技能1号水準の技能を有する人材の育成と確保人材不足解消
対象者技能を習得したい外国人特定技能1号の資格取得を目指す外国人一定の技能と日本語能力を持つ外国人
在留期間最長5年原則3年(最長4年)1号:最長5年
2号:無期限
転職原則不可一定の条件下で可能可能
技能レベル入国時は不問入国時はN5レベル、3年後に特定技能1号相当の技能レベルが必要一定の技能レベルが必要
日本語能力入国時は不問入国時はN5レベル、3年後にN4レベルが必要N4レベルが必要
雇用形態監理団体を通じて企業に派遣企業が直接雇用企業が直接雇用
備考2027年以降は育成就労制度に移行特定技能制度と技能実習制度の特徴を併せ持つ
※育成就労制度については、現時点での情報に基づいており、今後変更になる可能性があります。

上記の表を見ると、改めて、3つの制度にはそれぞれ異なる特徴があることが分かりますね。

  • 技能実習制度は、開発途上国への技能移転が目的。
  • 育成就労制度は、特定技能1号への移行を前提とした人材育成が目的。
  • 特定技能制度は、即戦力となる人材の確保が目的。

企業の皆様は、それぞれの制度の特徴を理解し、自社のニーズや状況に合わせて最適な制度を選択するようにしましょう。

外国人材を受け入れるための準備内容

外国人労働者を受け入れる際には、それぞれの制度ごとに企業側にいくつかの要件が求められます。
それぞれの制度でどんな準備が必要なのか、事前に把握しておきましょう。

技能実習生

技能実習生を受け入れるには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 監理団体への加入

企業単独で技能実習生を受け入れることはできません。 必ず、非営利の監理団体に加入します。
監理団体は、実習生の募集から生活のサポート、企業へのアドバイスなど、様々な役割を担っています。企業は監理団体に加入することで、実習生の受け入れに関する手続きやサポートをスムーズに行うことができます。

  1. 技能実習計画の作成と認定

受入企業は、技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構に認定申請を行います。
この計画には、実習内容や期間・実習生の待遇などが具体的に記載され、 外国人技能実習機構はこの計画が適切かどうかを審査し、認定を行います。

  1. 建設業法第3条許可

建設業法第3条の許可を受けている企業しか受け入れることができません。

  1. 建設キャリアアップシステムへの登録

建設キャリアアップシステムとは、建設業で働く方の就業履歴や技能などを記録するシステムです。
企業および技能実習生も入国後、第2号技能実習に移行するまでに、このシステムに登録する必要があります。

  1. 報酬の安定的な支払い

技能実習生も日本人労働者と同様に安定した収入の支払いが必須です。
そのため、技能実習生に対しては、仕事の閑散期であっても毎月決まった金額を支払う必要があります。

  1. 技能実習生の数

 技能実習生を受け入れる人数には、一定の制限があります。
基本的には、会社の常勤職員の人数を超えて技能実習生を受け入れることはできません。
ただし、企業が優良な実習実施者として認められた場合や、監理団体が優良な監理団体として認められた場合は、この制限が緩和されます。

育成就労人材

技能実習制度を根本的に見直し、新たに創設される制度であることから、企業側の要件も、技能実習制度や特定技能制度の要件を踏襲しつつ、新たな要件が追加される可能性があります。

育成就労制度の正式な要件は今後変更される可能性があります。 最新の情報は、国土交通省のウェブサイトなどで確認してください。

以下は、予想の内容になります。

  1. 育成就労計画の作成・認定

    育成就労外国人ごとに、「育成就労計画」を作成し、外国人育成就労機構による認定を受ける。
  2. 監理支援機関の活用

    育成就労を実施する企業は、監理支援機関の許可を受け、監理支援機関と連携して、外国人の育成や生活支援などを行う必要がある。
  3. 支援体制

 企業が外国人材の定着を支援(日本語教育や生活ガイダンスなど)する必要がある。

特定技能人材

特定技能制度で外国人材を受け入れるには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 建設業法第3条許可

特定技能1号の外国人材を雇用するには、技能実習生と同様に、建設業法第3条の許可を受けている企業しか受け入れることができません。

  1. 建設キャリアアップシステムへの登録

企業と雇用する外国人材の両方が、建設キャリアアップシステムに登録している。

  1. 国内人材確保の取り組み

特定技能外国人材を雇用する前に、企業は日本人材の確保に努めていることを証明する必要があります。例えば、適切な条件で求人活動を行っているか、日本人従業員に適切な賃金を支払っているかなどが審査されます。

  1. 特定技能雇用契約に関する重要事項説明

外国人材と雇用契約を結ぶ前に、契約内容について詳しく説明する。

  1. 特定技能雇用契約の締結

外国人材と雇用契約を結ぶ際には、日本人材と同等額以上の賃金を支払うことや、技能の習熟度に応じて昇給させることなどを契約書に明記する必要があります。 賃金の支払いは、仕事の量に関わらず、毎月決まった額を支払います。

  1. 1号特定技能外国人支援計画の作成

企業は、特定技能1号の外国人材を支援するための計画を作成する必要があります。

  1. 建設定技能受入計画の認定申請

企業は、特定技能外国人材を受け入れるための計画を作成し、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。

  1. 受入人数の制限

特定技能1号の外国人材を受け入れる人数には制限があり、外国人材と日本人材の合計が、常勤職員の総数を超えてはいけません。

  1. JACへの加入

特定技能外国人材を雇用するには、JAC(建設技能人材機構)に加入する必要があります。

JAC(建設技能人材機構)ってどんな組織?

JAC(建設技能人材機構)は、建設業界で働く外国人材をサポートするための組織で、外国人材と受入企業の両方をサポートするために、以下のような活動を行っています。

外国人材と企業のマッチング

外国人材が建設業界で働くために必要な試験を実施しています。
この試験に合格した外国人材は、JACのサポートを受けて就職できます。 また、すでに日本で働いている外国人材が転職する場合もJACがサポートします。
JACへ求人情報を提供することで、適切な外国人材を採用することができます。

外国人材の受け入れ・定着支援

企業が外国人材を受け入れるためには、計画を作成して申請する必要があります。
JACは、計画の作成サポートや外国人材を受け入れた後の指導・相談の対応をしています。
外国人材が安心して日本で生活し、働けるように、様々なサポートを提供しています。

外国人材の受け入れに関する費用を管理

外国人材を受け入れる際にJACに費用を支払う必要があります。

JACへの加入方法

特定技能制度を利用して外国人材を雇用するには、JACに加入する必要があります。
加入方法は、以下の2つがあります。

  1. 建設業者団体を通じて加入

多くの企業は、すでに加入している建設業者団体を通じて、JACに加入しています。

  1. JACに直接加入

建設業者団体に加入していない企業は、JACに直接加入することができます。

企業が負担する費用は、

  • 年会費
    JACに直接加入する場合、年間24万円の年会費が必要です。
  • 受入負担金
    外国人材1人につき、毎月負担金が必要です。 負担金の金額は、加入している建設業者団体やJACに確認することができます。

まとめ

建設業界が抱える人材不足は、もはや待ったなしの状況です。
外国人材の受け入れは、この課題を解決する上で、非常に有効な手段となりえます。

本記事では、外国人材の雇用制度として、「技能実習制度」「特定技能制度」「育成就労制度」の3つを比較し、それぞれの特徴やメリット、企業側の要件などを解説しました。

それぞれの制度は、目的や内容、そして企業側に求められる要件が異なります。

企業の皆様は、まずそれぞれの制度をよく理解し、自社のニーズや状況に合った制度を選択することが重要です。

  • 即戦力となる人材が必要な場合 → 特定技能制度
  • 技術移転を目的とする場合 → 技能実習制度 (ただし、2027年以降は育成就労制度に移行)
  • 長期的な人材育成を検討している場合 → 育成就労制度

といったように、それぞれの制度の特徴を踏まえ、最適な制度を選択しましょう。

制度の選択にあたっては、コスト、法的要件、将来の展望なども考慮することで、より的確な判断ができます。

ぜひこの記事を参考にして、外国人材の受け入れを前向きに検討してみてください。
外国人材の活躍は、企業の成長だけでなく、建設業界全体の活性化にもつながるはずです。