2026年に入り、外国人材の受入れをめぐる制度環境が大きく変わっています。
政府は2028年度末までの受入れ上限を「123万1,900人」と閣議決定し、特定技能制度は19分野へ拡大。一方、外食業では初めて受入れ上限に達し、新規受入れが停止されるという事態が発生しました。
このページでは「なぜ今これほどの大転換が起きているのか」から始まり、制度の仕組み・分野別の受入れ枠・外食業停止の背景・育成就労制度の概要まで、一本の流れで理解できるようにまとめています。
1. なぜ今、制度の大転換が起きているのか
日本の少子高齢化による労働力不足は、もはや一時的な問題ではなく、産業の根幹を揺るがす慢性的な課題となっています。この危機に対応するため、政府はこれまでの「補完的な外国人活用」から「基幹的な外国人材の受入れ」へと方針を大きく転換しました。
その柱となるのが2019年にスタートした「特定技能」制度と、2027年開始予定の「育成就労」制度の2つです。さらに2026年1月には、両制度を合わせた5年間の受入れ上限を「123万1,900人」と閣議決定し、外国人材の受入れは文字通り「社会の基盤」として位置づけられる時代に入りました。
制度転換のポイント(3つの変化)
- 「補完的な人材確保」から「基幹的な人材戦略」へ方針が転換
- 技能実習制度(国際貢献名目)→育成就労制度(育成・定着を明確な目的に)
- 特定技能1号(即戦力)・2号(長期定着)・育成就労(育成)が一体管理される体系へ
2. 特定技能制度 分野拡大の経緯
特定技能制度は、人手不足が深刻な産業分野に限って、一定の技能・日本語能力を持つ外国人材の就労を認める在留資格です。2019年の創設時は12分野でスタートし、その後2度の拡大を経て現在は19分野体制となっています。
【図解】在留資格の種類と制度の位置づけ(技能実習→育成就労→特定技能の流れ)
| 比較項目 | 技能実習 | 育成就労(2027年〜) | 特定技能1号 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献・技術移転(名目) | 育成しながら人材確保(明確化) | 即戦力の確保 |
| 在留期間 | 最大5年 | 3年(特定技能移行前提) | 最大5年(上限あり) |
| 転籍(転職) | 原則禁止 | 一定条件で可能に(改革点) | 同分野内は自由 |
| 家族帯同 | 不可 | 不可 | 不可 |
| 受入れ上限 | なし(廃止予定) | 分野別上限あり | 分野別上限あり |
| 次のステップ | 技能実習3号 or 帰国 | →特定技能1号へ移行 | →特定技能2号へ移行可 |
分野拡大の経緯 2024年に4分野を追加
2024年3月の閣議決定では、物流・交通・地域産業を支える以下の4分野が新たに追加され、特定技能は16分野体制になりました。
| 追加分野 | 主な対象業務 | 特記事項 |
|---|---|---|
| 自動車運送業 | バス・タクシー・トラック運転者 | 日本の運転免許取得が条件 |
| 鉄道 | 運転士・車掌・軌道整備・車両整備など | 広範なインフラ維持業務が対象 |
| 林業 | 育林・素材生産 | 山間部の深刻な労働力不足に対応 |
| 木材産業 | 製材・合板製造などの加工工程 | 国産材の活用促進を後押し |
2026年の見直し 新たに追加された3分野(計19分野へ)
2026年の制度見直しでは、社会インフラとして重要性が増している以下の3分野が独立したカテゴリーとして追加され、特定技能は現在の19分野体制になっています。
| 追加分野 | 主な対象業務 | 追加の背景・理由 |
|---|---|---|
| リネンサプライ | クリーニング・リネン供給・洗濯関連業務 | 医療・宿泊施設向けリネン供給の担い手が不足 |
| 物流倉庫 | 入出荷・仕分け・ピッキング・在庫管理 | EC拡大による倉庫需要の急増に対応 |
| 資源循環 | 廃棄物収集・選別・リサイクル処理 | 脱炭素社会の実現に不可欠な業種として位置づけ |
3. 2026年閣議決定 受入れ上限「123万1,900人」の全貌
2026年1月23日、政府は2024年度〜2028年度末(2029年3月末)の5年間で、特定技能と育成就労を合わせた受入れ上限を「123万1,900人」とすることを閣議決定しました。
従来の特定技能単独の上限(約82万人)を大幅に上回る、過去最大の規模です。
分野別受入れ上限数の一覧(2024〜2028年度末)
以下の表は、今後5年間の分野別受入れ上限数です。
| 産業分野 | 特定技能1号 上限 | 育成就労 上限 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 工業製品製造業 | 199,500人 | 119,700人 | 319,200人 |
| 飲食料品製造業 | 133,500人 | 61,400人 | 194,900人 |
| 介護 | 126,900人 | 33,800人 | 160,700人 |
| 建設 | 76,000人 | 123,500人 | 199,500人 |
| 農業 | 73,300人 | 26,300人 | 99,600人 |
| 外食業 | 53,000人 | 14,000人(推計) | 67,000人 |
| ビルクリーニング | 37,000人 | 12,000人(推計) | 49,000人 |
| 造船・舶用工業 | 36,000人 | 10,000人(推計) | 46,000人 |
| 自動車運送業 | 24,500人 | — | 24,500人 |
| 宿泊 | 23,000人 | 5,000人(推計) | 28,000人 |
| 漁業 | 17,000人 | 5,000人(推計) | 22,000人 |
| 物流倉庫 | 11,000人(推計) | 10,000人(推計) | 21,000人 |
| 自動車整備 | 10,000人 | 4,000人(推計) | 14,000人 |
| リネンサプライ | 5,000人(推計) | 4,000人(推計) | 9,000人 |
| 資源循環 | 5,000人(推計) | 4,000人(推計) | 9,000人 |
| 木材産業 | 5,000人 | 2,000人(推計) | 7,000人 |
| 航空 | 4,400人 | — | 4,400人 |
| 鉄道 | 3,800人 | — | 3,800人 |
| 林業 | 1,000人 | — | 1,000人 |
| 合計 | 805,700人 | 426,200人 | 1,231,900人 |
【補足】123万人という数字の根拠はどこから?
「なぜ123万人なのか」と疑問に思う方も多いでしょう。この数字は、単なる希望的観測ではなく、以下の考え方に基づいて算出されています。
- AIやロボット技術の活用・DX推進による生産性向上分を差し引いた後、なお解決できない人手不足数として算出
- 育成就労(旧技能実習)の枠(約42万人)を特定技能と統合管理する新たなフレームワーク
- 育成就労→特定技能1号→特定技能2号というキャリアパスを一体的に管理する設計
- 「外国人材で不足を補う前に、まずテクノロジーで省人化を極限まで行え」という政府の姿勢が背景にある
4.【参考事例】外食業で初めて上限に達した(2026年4月〜)
分野別の受入れ上限は「あくまで目安では?」と思われるかもしれません。しかし、2026年春、その枠が法的強制力を持った「壁」として機能した事例が実際に起きました。
何が起きたのか(外食業・2026年4月13日〜)
外食業の特定技能1号の受入れ上限(5万人)に達する見込みとなり、4月13日から新規申請が原則停止。
2026年2月末時点で約4万6,000人(上限の92%)に到達し、このペースでは5月に超過が確実だったため、在留資格認定証明書(COE)は不交付、国内での在留資格変更も不許可、評価試験の予約も停止となった。
ただし、在留中の方の在留期間更新・同分野内での転職は引き続き可能に。
なぜ外食業だけが上限に達したのか
外食業は技能実習からの移行が他分野より活発に進んだこと、コロナ後の人手不足の深刻化、言語・技能面のハードルの低さが重なり、申請が急増しました。
一方で飲食店側は「テクノロジーによる省人化(配膳ロボット・モバイルオーダーなど)が十分ではない」との見方もあり、政府は「まず国内での人材確保と省人化を最大限行うべき」との姿勢を崩していません。
この事例は、どの分野でも「受入れ枠は有限である」ことを示す重要な警告です。
自社が採用を計画している分野の残枠状況は、出入国在留管理庁・各省庁の公式サイトで定期的に確認することをおすすめします。
5. 育成就労制度(2027年〜)技能実習の後継制度
技能実習制度は2027年をめどに廃止され、「育成就労制度」が始まります。
最大の変更点は、外国人材を受け入れる目的が「国際貢献・技術移転(名目)」から「日本の人材として育成する(実態に合わせた明確化)」へと転換される点です。
育成就労制度の主なポイント
- 3年間の就労を通じて特定技能1号水準まで「育成」することが明確な目標
- 技能実習では原則禁止だった「転籍(職場変更)」が一定条件のもとで可能に
- 育成就労→特定技能1号→特定技能2号というキャリアパスが制度的に一本化
- 対象は17分野。2028年度末までの受入れ上限は42万6,200人
- 受入れ企業は「育成計画」の策定が求められ、育成実績が問われる制度設計
育成就労と技能実習・特定技能1号の主な違い
| 比較項目 | 技能実習 | 育成就労 | 特定技能1号 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献(名目) | 人材育成・確保(実態を明確化) | 即戦力確保 |
| 在留期間 | 最大5年 | 3年(更新なし・移行前提) | 最大5年 |
| 転籍 | 原則禁止 | 一定条件で可能 | 同分野内は自由 |
| 技能レベル | 一定の技能習得 | 特定技能1号水準まで育成 | 特定技能試験合格レベル |
| 次のステップ | 帰国 or 技能実習3号 | →特定技能1号へ移行 | →特定技能2号へ移行可 |
特定技能2号(参考):上限なし・家族帯同が可能な長期定着の選択肢
育成就労→特定技能1号と段階を経た先に「特定技能2号」があります。
2号には原則として受入れ上限がなく、在留期間の更新回数にも制限がありません。さらに家族帯同が認められるため、外国人材の長期定着・離職率低下に大きく貢献します。
2025年6月末時点での2号在留者は3,073人(2号対象分野拡大後に急増中)。
外食業のように1号の枠が逼迫している分野では、在籍する外国人材の2号移行を計画することが有効な長期戦略となります。
6. 中小企業の経営者が今すぐ取るべき3つのアクション
制度変更が続く中でも、受入れ企業として「今何をすべきか」は明確です。以下の3点を優先的に確認・対応してください。
1.自社が採用する分野の「上限残枠」を今すぐ確認する
外食業のように上限到達が近い分野では、早期の申請・手続きが不可欠です。分野別の残枠状況は出入国在留管理庁・各省庁の公式サイトで定期確認しましょう。
計画している分野の枠が少ない場合は、隣接分野(例:飲食料品製造業など)への切り替えも検討を。
2.在籍する外国人材の育成計画・キャリアパスを整備する
2027年の育成就労制度開始に向け、技能実習生を「育成就労→特定技能1号→2号」のルートで長期的に定着させる計画を今から立てましょう。
試験対策支援やキャリア面談の仕組みを整えることが「選ばれる企業」への近道です。
3.信頼できるパートナー(登録支援機関・監理支援機関・行政書士)を今から選定する
関わる制度によって、連携すべき支援機関が異なります。それぞれの役割を把握した上で、自社の採用計画に合ったパートナーを選びましょう。
・特定技能を活用する場合 → 登録支援機関
全国で1万件を超え質の差が大きいのが現状です。書類作成の代行だけでなく、制度変更をリアルタイムで把握し採用戦略のコンサルティングまでできる機関を選ぶことが重要です。
・育成就労を活用する場合 → 監理支援機関
育成就労制度では、技能実習の「監理団体」に相当する「監理支援機関」が受入れ企業を支援・監督します。監理支援機関は許可制となっており、育成計画の作成支援・定期的な訪問指導・転籍支援など、育成就労特有の実務を担います。信頼性・支援実績を確認した上で選定することが、育成就労を円滑に活用するための鍵です。
7. 早めの行動が優秀な人材を確保する鍵に
2026年現在、外国人材受入れ制度は大きな転換点を迎えています。
特定技能は19分野へと拡大し、育成就労制度の開始も目前に迫るなか、受入れ上限「123万1,900人」という国家規模の人材確保の枠組みが整いつつあります。外食業で初めて受け入れ停止が発生したことは、制度が「絵に描いた餅」ではなく、実際に機能する厳格なルールであることを示しました。
一方で、こうした変化は脅威ではなく「準備している企業にとってのチャンス」でもあります。受入れの枠が有限だからこそ、早めに動いた企業が優秀な人材を確保できます。
育成就労制度では、3年間を通じて自社に合った人材を育て、特定技能1号・2号へとつなげる長期的なキャリアパスを描くことができます。転籍が一定条件のもとで認められるようになったことも、外国人材にとって「働き続けたい職場を自分で選べる」環境への変化を意味し、真摯に人材と向き合う企業には追い風となるでしょう。
まずは自社の採用分野の残枠を確認し、育成計画を整え、信頼できるパートナー(登録支援機関・監理支援機関)を選ぶこと。この3つのステップが、制度の大転換期を乗り越え、外国人材とともに成長し続ける企業への第一歩です。
変化の速い制度環境だからこそ、早めに動き出した企業が「選ばれる職場」として長期的な優位性を築いていけるのではないでしょうか。
| 【免責事項・注記】本記事は2026年3月時点の情報をもとに作成しています。制度の数値・上限枠は閣議決定・省令改正により変更となる場合があります。申請手続きについては、出入国在留管理庁・各省庁の公式サイトまたは専門家(行政書士・登録支援機関)にご確認ください。 ※上記の費用・数値は一例です。地域や業種により異なります。 |