高度人材

高度人材(技術・人文知識・国際業務)の概要

在留資格「技術・人文知識・国際業務」について

「専門性や語学力を活かした海外人材の戦力化で、企業の競争力を高めたい」──そんな中小企業の経営者・人事担当者に向けて、高度人材(技術・人文知識・国際業務)ビザについて解説します。

1. 制度の目的と背景

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、日本の産業や文化に貢献しうる専門的な知識や技術、または国際的な感性を持つ外国人材の受け入れを目的としています。

我が国の少子高齢化による労働力不足と経済のグローバル化に伴い、専門性を持った外国人材のニーズが高まっています。これらの高度人材は、日本企業の国際競争力強化や新たな価値創造につながる重要な存在となっています。

高度人材制度が必要とされる背景

  • グローバル化による専門人材ニーズの高まり
  • 企業の国際競争力強化を支援する制度設計
  • 専門的知識・技術を持つ人材の確保

「専門性」を前提とした在留資格

特定技能制度が「働くこと」そのものが主目的であるのに対し、高度人材制度は「専門的知識・技術の活用」が主目的です。

高度な専門性と一定の日本語能力を重視

高度人材ビザの取得には、学歴や実務経験に基づく専門性と、業務に必要な日本語または英語能力が求められます。これにより、より付加価値の高い業務での活躍が期待されています。

長期的なキャリアと日本社会への定着

高度人材制度は原則として在留期間の上限がなく、定住や永住への道も開かれています。これにより、外国人材が日本社会に溶け込み、長期的に貢献することが期待されています。

2. 高度人材制度の全体像

高度人材の区分

高度人材制度には主に「技術・人文知識・国際業務」と、より優遇措置のある「高度専門職」の区分があります。

「技術・人文知識・国際業務」は、専門的な知識や技術を持つ外国人材向けの在留資格で、学歴や実務経験によって取得が可能です。

一方、「高度専門職」は、学歴、職歴、年収、研究実績などでポイントが計算され、70点以上で認定される制度です。より多くの優遇措置が設けられています。

区分技術・人文知識・国際業務高度専門職1号高度専門職2号
在留期間1年・3年・5年5年無期限
更新可能可能不要
要件専門学校・大学卒以上または相当の実務経験ポイント制で70点以上(学歴・職歴・年収など)高度専門職1号で3年以上活動
家族帯同配偶者・子ども可配偶者・子ども可
親も条件付きで可能
配偶者・子ども可
親も条件付きで可能
就労制限該当する活動範囲内のみ指定された活動範囲内経営・管理含む幅広い活動可

3. 対象となる活動

高度人材(技術・人文知識・国際業務)の在留資格で認められる主な活動は以下の通りです。

技術分野

  • IT/プログラミング開発
  • 機械/電気/建築設計
  • バイオ/医療関連研究
  • データ分析/AI開発
  • 製造技術/品質管理

人文知識分野

  • 経営コンサルティング
  • 会計/財務分析
  • 法務/知的財産管理
  • マーケティング/市場分析
  • 企業内研修/人材開発

国際業務分野

  • 通訳/翻訳
  • 貿易実務/国際営業
  • 異文化コミュニケーション
  • 外国語教育
  • 国際広報/メディア対応

これらの活動は学歴や実務経験に基づく専門性が求められ、単純作業や一般事務業務は対象外となります。

4. 高度人材ポイント制度

ポイント制では、学歴、職歴、年収などの項目ごとにポイントが付与され、合計点が70点以上で「高度専門職」として認定されます。

高度専門職の優遇措置

  • 複合的な就労活動の許可(本来の活動に支障がない範囲)
  • 在留期間が最長5年(1号)、無期限(2号)
  • 一定の条件下で親や家事使用人の帯同が可能
  • 永住許可申請の要件緩和(高度専門職1号で3年以上の在留で申請可能)
  • 出入国手続きの優先処理

この制度を活用することで、より優秀な外国人材の採用や定着につながる可能性があります。

5. 中小企業向け高度人材制度活用ポイント

中小企業が高度外国人材を活用するためには、自社の特性を活かしつつ、長期的な視点で採用・育成・定着の戦略を立てることが重要です。

ポイント1:企業の強みを活かした採用戦略の構築

大企業に比べて知名度や待遇面で不利な中小企業でも、技術力や成長機会、意思決定の速さなど、独自の強みをアピールすることで優秀な人材を惹きつけることができます。

ポイント2:専門学校・大学との連携で人材確保ルートを構築

  • 留学生のインターンシップ受入れから正社員採用へ
  • 専門学校や日本語学校との連携で継続的な採用ルートを確保
  • オンライン面接とリモートワークを組み合わせた段階的な採用プロセス
  • 専門性を活かせる職場環境と明確なキャリアパスの提示

ポイント3:高度専門職を目指す長期的育成計画の策定

  • 入社後の日本語能力向上支援(N1・N2取得で加点)
  • 年収アップやスキルアップの道筋を明確に示す
  • 社内で責任ある地位への登用計画
  • 永住権取得支援を視野に入れた長期的関係構築

ポイント4:多様性を活かす組織体制づくり

外国人材の能力を最大限に引き出すためには、多様な文化や価値観を認め合う組織風土の醸成が不可欠です。これが高度人材の定着と企業の国際競争力強化につながります。

まとめ

2025年現在、グローバル化の進展と国内労働市場の変化により、専門性を持った外国人材の採用・活用がますます重要になっています。

高度人材活用を成功させるためには、

  1. 自社の強みを活かした採用戦略の構築
  2. 教育機関との連携による継続的な採用ルートの確保
  3. 高度専門職を目指せる長期的育成計画の策定
  4. 多様性を活かす組織体制づくり

が鍵となります。

高度人材(技術・人文知識・国際業務)ビザの制度特性を理解し、企業の国際競争力強化と人材の長期的な成長を両立させる人事戦略を構築しましょう。

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