手続きの全体像
特定技能外国人材の受入れ手続きは大きく「受入れ前」と「受入れ後」に分かれます。
受入れ前
1.支援計画・雇用契約の作成(T-3ヶ月~)
企業または登録支援機関が支援計画を策定。外国人材と雇用契約を締結。
2.在留資格認定証明書申請(T-2〜1ヶ月)
企業または行政書士が入国管理局へ申請。(COE交付まで1~1.5ヶ月程度が目安)
3.ビザ申請(T-1ヶ月~)
特定技能人材 → 現地の日本大使館または領事館で申請。(COE交付後、速やかに申請)
受入れ後(来日・就業開始後)
1.各種届出(住民登録/年金/保険)
来日後2週間以内に居住地の市区町村役場へ。登録支援機関が同行・支援することが多い。
2.支援実施記録と定期届出(年1回)
企業(または登録支援機関)は支援計画に基づく義務を実施。実施した支援内容は全て記録・保管が必要。(2025年4月改正で定期届出は年1回に簡素化)
3.在留更新・特定技能2号移行
特定技能の在留資格は期限があるため、更新が必要。特定技能2号への移行や家族帯同の可否も要確認。各種届出や支援記録は5年間保管義務あり。
2025年4月 改正ポイント
特定技能制度は2025年4月に一部運用が改正されました。主な変更点として、受け入れ企業から出入国在留管理庁への定期届出が四半期ごとから年1回に簡素化されました。また、一定の条件下では、外国人材との定期面談がオンラインでも可能になるなど、企業の負担軽減が図られています。
受入前の申請書類について
1. 支援計画書・雇用契約の作成
特定技能人材の受け入れには、法務省令で定められた支援内容を盛り込んだ「支援計画書」の作成と、外国人材との「雇用契約」の締結が必須です。
支援計画書・雇用契約の作成
時期 | 実習開始予定日の3ヶ月前までに |
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作成者 | 受入企業(所属機関)と登録支援機関 |
内容 | 法務省令で定められた10項目の支援内容を記載 |
支援計画書
特定技能人材が日本で安心して働き、生活できるよう、入国前オリエンテーション、送迎、住居確保支援、行政手続き同行、日本語学習支援、相談対応など、具体的な支援内容を記載します。多くの企業では、この作成・実行を登録支援機関に委託しています。
支援計画に記載すべき主な項目
- 事前ガイダンス(入国前・後)
- 出入国時の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 行政手続き同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情対応
- 日本人との交流促進
- 外国人が自発的に離職する場合の転職支援
- 定期面談の実施(最低3ヶ月に1回)
雇用契約書
業務内容、報酬、勤務時間、休日などを明確に定めます。報酬は日本人と同等以上である必要があります。
外国人材が内容を正確に理解できるよう、日本語と母語の併記が推奨されています。
2. 在留資格認定証明書(COE)申請
特定技能人材が日本に入国するためには、地方出入国在留管理局から在留資格認定証明書の交付を受ける必要があります。
在留資格認定証明書(COE)申請
時期 | 実習開始予定日の2~1ヶ月前まで |
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申請者 | 受入企業または委託を受けた行政書士 |
提出先 | 地方出入国在留管理局 |
提出方法 | 窓口申請または代理人による郵送 |
主な必要書類
- 在留資格認定証明書交付申請書
- 申請人の証明写真(縦4cm×横3cm)
- 返信用封筒(切手貼付)
- 特定技能雇用契約書の写し
- 支援計画書の写し
- 申請人の旅券(パスポート)の写し
- 技能試験・日本語試験の合格証明書等(技能実習2号等修了者は修了証明書等)
- 登録支援機関との支援委託契約書(委託する場合)
- 履歴書
- その他、分野別に求められる資料
申請時期と期間
就業開始予定日の2~1ヶ月前までに行うのが一般的ですが、交付までには平均1~1.5ヶ月程度かかります。
この交付予定日に合わせて、外国人材の航空券や社宅の手配を逆算すると、無駄なくスムーズに進められます。
3. ビザ申請・交付
COEが無事に交付されたら、それを特定技能人材本人に送付します。
外国人材はCOE原本、旅券(パスポート)、査証申請書などを持って、現地の日本大使館または領事館でビザ(査証)を申請します。
ビザ(査証)申請・交付
時期 | COE交付後、速やかに |
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申請者 | 特定技能人材本人 |
提出先 | 現地の日本大使館または領事館 |
主な必要書類 | 旅券、査証申請書、COE原本 |
申請書類
旅券、査証申請書、COE原本が主な必要書類です。必要書類は国によって異なる場合があるため、申請先の在外日本公館のウェブサイトで確認してください。
交付期間
ビザは申請後、比較的短期間で交付されることが多いですが、念のため早めに手続きを進めましょう。ビザが交付されれば、いよいよ来日が可能となります。
受入後に発生する「必ずやるべき」手続きと対応
特定技能人材の来日・就業開始後も、企業としての重要な手続きと継続的な支援が求められます。
1. 住民登録・社会保険(来日後14日以内)
来日したら、特定技能人材はまず居住地の市区町村役場で住民登録(転入届)を行います。
また、日本の国民年金・健康保険への加入も義務付けられています。
住民登録・社会保険加入
時期 | 来日後14日以内 |
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手続者 | 特定技能人材(登録支援機関が同行支援) |
提出先 | 居住地の市区町村役場 |
主な手続き | 住民登録、マイナンバー申請、保険加入 |
これらの手続きは、多くの場合、登録支援機関が外国人材に同行してサポートしてくれます。円滑な手続きのため、必要な書類などを事前に登録支援機関と連携して準備しておきましょう。
来日後14日以内の主な手続き
- 市区町村役場での住民登録(転入届)
- マイナンバーカード交付申請
- 国民健康保険加入(社会保険未加入の場合)
- 国民年金加入(社会保険未加入の場合)
- 社会保険(健康保険・厚生年金)加入手続き
- 銀行口座開設
- 携帯電話契約
2. 支援実施記録と定期届出(年1回)
受入企業(または登録支援機関)は、特定技能人材に対する支援計画に基づいた支援を継続的に実施し、その内容を記録する必要があります。
支援実施記録と定期届出
定期届出 | 年1回 |
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報告者 | 受入企業または登録支援機関 |
提出先 | 出入国在留管理庁 |
記録内容 | 面談記録、支援実施状況、生活状況など |
支援実施記録
毎月の定期面談の結果、日本語学習支援の状況、生活相談への対応履歴などを詳細に記録します。この記録は、後述の定期届出や、在留期間更新、出入国在留管理庁による監査などの際に提出を求められることがあります。
支援記録として残すべき事項
- 定期面談の記録(日時・場所・内容・対応者)
- 相談対応の記録(相談内容・対応内容・結果)
- 日本語学習支援の実施記録
- 行政手続き同行の記録
- 生活オリエンテーションの実施記録
- 日本人との交流イベント実施記録
- その他、支援計画に基づく実施内容すべて
定期届出
支援の実施状況や、外国人材の就労状況・生活状況などを記載した支援実施状況届出書を、年に1回、出入国在留管理庁に提出します。
もし支援計画通りに支援が実施できなかった項目がある場合は、その理由と今後の是正策を記載した支援未実施理由書も併せて提出します。
住所変更や支援担当者の交代など、支援計画の軽微な変更があった場合は、その都度支援計画変更届出書を提出します。
保管義務
作成した支援記録や提出した各種届出書類の控えは、支援期間終了後5年間保管する義務があります。紙媒体でも電子データでも構いません。
3. 在留期間更新・特定技能2号への移行
特定技能1号の在留期間には上限(通算5年)があり、通常1年ごとに更新が必要です。
在留期間が満了する2~3ヶ月前になったら、出入国在留管理庁へ在留期間更新許可申請書を提出します。
特定技能1号で5年間在留した後、特定の要件(分野別試験合格、日本語能力水準)を満たせば、特定技能2号へ移行できる場合があります。特定技能2号に移行すると、在留期間の上限がなくなり、家族帯同も可能になります。移行を希望する場合は、分野別試験の合格証などが必要になります。
在留期間更新・特定技能2号への移行
時期 | 期間満了の2〜3ヶ月前 |
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申請者 | 特定技能人材(企業または支援機関が支援) |
提出先 | 地方出入国在留管理局 |
更新条件 | 適正な就労・支援状況、法令遵守など |
まとめ
特定技能制度は、人手不足に悩む中小企業にとって、即戦力となる外国人材を受け入れる現実的なルートです。複雑に感じるかもしれませんが、「制度理解」「適切な支援」「正確な記録」の3つの柱を押さえれば、決して難しいものではありません。
特定技能外国人材受入れ成功の3つの柱
制度理解
- 最新情報の確認
- 様式確認
- 期限管理
- 要件把握
適切な支援
- 支援計画の確実な実行
- 登録支援機関との連携
- コミュニケーション重視
正確な記録
- 支援履歴の詳細記録
- 定期届出の適切な提出
- 記録の5年間保管
特定技能外国人材を受入れた後の届出や報告は、多岐にわたりますが、これらは全て適正な就労環境を確保し、外国人材を保護するために必要な手続きです。
最初は複雑に感じるかもしれませんが、一つずつ内容を理解し、提出時期を守り、そして登録支援機関と連携して進めることで、必ず対応できます。
中小企業でも、これら3つの点を仕組み化することで、特定技能による外国人採用を安全かつ効率的に進めることが可能です。
まずは、法務省など関係機関のウェブサイトに掲載されている公式様式へのリンク名を社内マニュアルに貼り付け、担当者がワンクリックで必要な情報を確認できる環境を整えることから始めてみましょう。